2000年9月、世界放浪の旅が始まった。スタートはアメリカ。初日はリノ市のオートキャンプ場でテント泊だった。
朝、雨音で目がさめる。と、直ぐに止んだ。
テントの入り口を開けると空は晴れている。
雨音かと思ったらスプリンクラーの水がテントに当たっていた。
空気が清々しい。
しばらく車を走らせると、街を出て長―く続く一本道に入る。
遠くには7-800m位の山が連なる雄大な景色。
これから砂漠に入っていくのだろう。
ラジオからはいかにもアメリカっぽいDJの声と音楽。
「おーー。」
昨日まで日本に居たのに今はこんな所を一人でドライブしている。
旅が始まったことを実感した。
昨日まであった不安感は無くなり、景色を楽しんだ。
地図でみるともう少しで目指すBlack Rock Cityだ。
小さなガススタンドがあるので
最後の休憩の為に車を停める。
周りに何も無い小さなスタンドは
やたらと活気付いていた。
売店では埃まみれの若者が
何人も買い物をしている。
「そうか、彼等はBurning manから来てるんだ。」
とうとう目的地が近くなってきたことが分かった。
外に出るとピクニックテーブルで
6-7人が楽しそうに輪になって話している。
勇気を出して僕も話し掛けてみる。
「Burning manに行くの?」
「いやいや、僕らはこれからNew Yorkに帰るところ。
仕事があるからね。最後迄居たいんだけど。」
そっか。
「チケットは買えるかな。」
「いや、もう昨日で販売は終わったよ。」
やっぱりそうか。。ちょっと困っていると、
「これ、私が使っていたチケットの半切れ。これできっと大丈夫。」
と女の子がポケットから出した紙切れを僕にくれた。
なんと素晴らしい。
住所を交換して僕は一路Black Rock City を目指した。
彼等には後でNew Yorkで再会した。
なんと幸先の良いスタート。
気持ちが高揚してきた。入り口がみえてくる。
ゲートでチケットの半切れを見せると、
簡単に通してくれた。
「やった!!」とうとう念願のBurning manに辿り着いた。
ゲートを抜け、先ずはテントを張った。
とにかくどの位この会場が大きいのかが分からない。
早速歩き始める。真っ青な空が気持ち良い。
空気は乾燥していて気持ち良い。
テントは大きく輪状に張られていて、
真中が直径2km位、円形の空き地になっている。
一体どの位の人数がそこに居るのか、検討がつかなかった。
(後で聞けば、約2万8千人とのこと)
真中の空き地を抜けて
向こう側に行ってみようと歩き始める。
と、5分と経たない内に無茶苦茶に喉が渇いてきた。
僕は当時坊主頭で、帽子も被らず歩いていたので、
物凄い勢いで水分が頭から蒸発していたのだろう。
そう、ここは砂漠だった。
乾燥の度合いが並ではないのだと分かった。
でも、水なんて持ってない。気付くと皆、
リュックを背負って水を入れている。
僕は恥を偲んで近くを通った人に水を求めた。
彼のリュックにはラクダみたいに水袋が装着されていて、
ストローが伸びている。
「あー助かった。ありがとう。」と言うと、
彼は‘Have a nice burn.’と笑顔で去って行った。
確かにこんな砂漠に1週間も居たら焼けてしまう。
「なるほど、これでBurning manってことか。」
なんて納得してしまった。
「これは1週間のサバイバルゲームでもあるんだな。」と、
テントに水を取りに帰りながら思った。
昼間は兎に角,水分補給が大変だった。
バーなども所々にある。
このBurning manの中ではお金は一切使えない。
物々交換であることが後で分かった。
僕は自分が持っていた何を
物々交換に使ったか思い出せないが、
お酒にありついた。
夜になると様子が一変した。
先ず寒い。昼間はtシャツで丁度良いのに、
夜は途端に日本の初冬なみの寒さだ。
でも星空は満天で、何よりも喉が渇かないので
幾らでも歩き続けることが出来た。
僕は会場の輪を抜け、
広大な砂漠をどんどん歩き始めた。
遠く、2km程先に光が見える。結構強い光だ。
「何だろう。」と思い、その光に向かって歩く。
辿り着いてみると、
ディスコのミラーボールが
下からライトアップされて回っている。
何も無い砂漠の中で
静かに回り続けるミラーボール。
周りには誰も居ない。
地面にはミラーボールの模様が反射して、
円形に地面をぐるぐる回っている。
暫く地面を眺める。単純だけど面白い。
さらに先にまた何か見える。
又1kmは離れている。
辿り着くと、
それはペダルを踏むと水が出る、
よく日本だと会社等で見かける水飲み機だった。
横には高さ1m位のピラミッドの形の置物もある。
砂漠にポツンと置かれた水飲み機。
「まさか。」と思いペダルを踏むと水が出た。
感動しているとピラミッド型の置物の中から人が出てきた。
びっくりした。
まさかこの人、夜通しこうやって
ピラミッドの中に隠れて水を
供給しているのかと思いきや、
何か修理の最中だった。
その夜はそこかしこに点在する
単純だけど面白い仕掛けを探して砂漠を歩き続けた。
満天の星空の下、何処まで歩いても
学校の校庭みたいに平らで
だだっ広い砂漠を歩くのは気持ち良かった。
8日間続いたBurning manの、
僕は最後の3日間を体験した。
そこは想像力と創造力が一番大事な世界だった。
20m近くある龍の乗り物が走り回っていたり、
雷発生装置が夜中に轟音と共に青光を放っていたり、
開拓時代の雰囲気のバーが
砂漠の中にポツンとあって皆裸だったり。
アメリカという国のスケールの大きさを感じた。
「馬鹿をやる時はとことんやります。」
っていうのがアメリカの底力になっているのかなと感じた。
この後、約半年のアメリカ、カナダの旅でこのBurning manで出来た仲間を訪ねた。アリゾナ州のボブはメキシコ人の為にスペイン語の医療サイトを作っていた。トロントのアンドリューは情報ネットワークのプロで、テクノDJだった。皆、とびきりしっかりした若者だった。
天晴れBurning man
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